❁渓山季彩・昇仙峡の四季❁<春・夏・秋・冬>

 覚円峰(左)と天狗岩
 覚円峰(左)と天狗岩

 

 

   昇仙峡渓谷は、江戸時代に御嶽新道として開通され、現存する鞍掛岩は、歌川広重の甲州日記写生帳の「甲州御嶽道クラカケ岩」(アメリカの個人所蔵)にも描かれています。

 浸食された花崗岩の奇岩、巨岩が続く渓谷は、水墨画にもふさわしい独特の山容水態を見せ、雪舟の秋冬山水図(東京国立博物館所蔵)をも思わせます。また、昇仙峡を象徴する覚円峰や天狗岩は、見るものを圧倒するほどの存在感を示し、しかも、季節や気象、見る位置により千変万化するといっても過言ではない容姿を魅せてくれます。特に、霧に煙ったシーンなどは、中国の黄山にも似た幽玄で幻想的な世界を演出します。

 渓谷の清流の音に耳を傾けながら、遊歩道を歩き、弘法大師空海の作と言われる五百羅漢像安置(現在は150体)の羅漢寺を訪れ、さらに歩をすすめ、天を突いた覚円峰の雄姿を仰ぎ見ます。そして、石門をくぐり仙俄滝へと足を運び、影絵の世界的巨匠、藤代清治の影絵美術館でファンタスティックな世界に浸るなど、多彩で贅沢な楽しみ方ができます。

 そこからロープウェイに乗り、天上の広大な空間に身を置くと、甲府盆地、富士山、南アルプス、金峰山など360°の絶景が堪能でき、また盆地を覆う雲の絨毯、大地を突き刺す天光などに遭遇すると、仙人の棲む居拠かと錯覚するほどその感動は頂点に達します。

 奥昇仙峡も、奥が深いところです。森林の中を歩く板敷渓谷が大変、すがすがしく、徒歩15分で着く大滝の帯のように白く流れ落ちる姿を見ると、心が洗われ無心となるでしょう。近くのロック山からは、眼下の能泉湖(ダム湖)、彼方の甲斐駒ケ岳などの南アルプスの山々と茅ヶ岳などの眺望が大変、すばらしく、鳥のさえずり以外、何も聞こえてこないサイレントゾーンです。そこから、秋の全山黄葉、冬のアルプスに沈みゆく夕日などを眺めていると、とてもロマンティックな気分に誘われてきます。

 さらに、野猿谷渓谷から黒平へと荒川の源流を車で遡上し、クリスタルラインに抜けることもでき、木賊(とくさ)峠を経て瑞牆(みずがき)山方面へ、あるいは乙女高原、夢の庭園にも回れるなど、非常に懐が深いところです。この一帯は、秩父多摩甲斐国立公園です。

 昇仙峡手前の千代田湖、帯那地区は、情緒的な雰囲気を醸し出してくれますが、帯那の棚田や眼下の千代田湖、彼方の南アルプスの山々を見つめていると、望郷の念にかられてきます。さらに、和田峠や堂の山(白山)、武田の杜などからは、富士山を背に「宝石箱をひっくり返した」甲府盆地の夜景図が楽しめます。ライトアップの夜桜、盆地の夜景、富士山の3点セットには、思わず歓声をあげてしまいます。

 桜やつつじを楽しむ春、豊かな緑と水の夏、そして、木々が着飾る紅葉の秋、さらに、澄み切った空と氷の造形美を楽しむ冬など、昇仙峡渓谷を中心とした一帯は、一年を通して存分に楽しむことが出来るすばらしい景勝地です。

写真家 塚原富幸

 

 

昇仙峡8選(周辺含む)

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「桜花に起つ」 (覚円峰・渓谷遊歩道)

名峰・覚円峰は、季節や気象、見る位置などで千変万化の姿を魅せる。遊歩道から仰ぎ見ると、それは雄姿となって現れる。

「新緑に煙る」 (覚円峰と天狗岩・グリーンライン)

平安時代の天台宗の僧、覚円がその頂で修業したといわれる覚円峰。「天狗(岩)と対峙か!」、などと勝手気ままな連想も面白い。

「望郷」(下帯那)

水田と眼下の千代田湖、そして、彼方の南アルプスの山々を見ていると、心が和み清浄くなる。「あー、我が故郷を想い出す」。

 

「山上の鏡像」(千代田湖)

 和田峠を上り、周囲4kmの小さな湖に着く。そこは、釣り人、小高い山、空、そして、雲もすべてが鏡像となって投影されていた。

「夜陰を照らす」(仙娥滝ライトアップ)

真っ暗闇の中、落下する水の音、その色、岩など、すべてがライトアップで生きいきと躍動してくる

「盛宴の杜」(武田神社)

武田家親子三代(信虎、信玄、勝頼)、盛宴の杜に栄枯盛衰の時代(とき)を刻む。

「明ける盆地」(和田峠)

冬の朝、青く、白く盆地が明けた。冷風が頬を撫ぜ、身も心も引き締めてくれた。「さあ、今日も頑張ろう!」

「天空の大眺望」(ロープウェイ・弥三郎岳頂上)

ロープウェイのパノラマ台駅から徒歩15分。富士山、南アルプス、金峰山、能泉湖など、360°の大パノラマは絶景の一語に尽きる。

 

 

 

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